パンチの速度は時速83km。加速度は10,400G。
22口径の弾丸と同じ衝撃を、体長15cmの甲殻類が「素手」で繰り出す。
モンハナシャコ。進化がやりすぎた結果、水中で爆発を起こす生き物が誕生した。
パンチ1発で爆発が起きる
モンハナシャコの打撃力は最大1,501ニュートン。プロボクサーのパンチが約3,000Nだから、15cmの体で人間の半分の威力を出している計算になる。
しかも恐ろしいのは、物理的な打撃だけでは終わらないことだ。
水中でパンチを放つと、あまりの速さで水が瞬間沸騰する。キャビテーション(空洞現象)と呼ばれる現象で、崩壊する気泡が衝撃波・熱・そして光を発生させる。
つまり、獲物は1回のパンチで「殴打」と「爆発」のダブルパンチを食らう。たとえ最初の打撃を耐えても、直後の気泡崩壊が追い打ちをかける。逃げ場はない。
色覚センサー16個。人間の5倍以上
パンチだけじゃない。目もおかしい。
人間の色覚受容体は3種類(赤・緑・青)。犬は2種類。
モンハナシャコは16種類。
うち6種類は紫外線専用。人間には見えない世界を、複数の異なる周波数帯で識別している。しかも左右の目が独立して別方向を向き、それぞれが三眼構造(1つの目に3つの視軸)を持つ。
正直、何が見えているのか人間には想像もつかない。色覚のスペックだけなら、地球上で最も高性能な目を持つ生き物だ。
水族館の強化ガラスを割る
こんな生き物を飼えるのか? 答えは「飼えるけど、水槽が壊れる」。
実際に水族館の強化ガラスを素手で叩き割った事例が複数報告されている。飼育には専用の強化アクリル水槽が必須で、普通のガラス水槽は耐えられない。
ダイバーの間では「サムスプリッター(親指を割る奴)」の異名で恐れられている。指に当たれば骨折は確実だ。
そのパンチ、軍事技術になる
デューク大学とハーバード大学は、シャコの「こぶし」の内部構造を研究している。
シャコの打撃部位は、ヘリカル(螺旋)構造の繊維が衝撃を分散する設計になっていて、あれだけの衝撃を出しながら自分の拳は壊れない。この構造を応用した軍用ボディアーマーやヘルメットの開発が進んでいる。
体長15cmの甲殻類の拳が、人間の防弾技術を進化させている。
これだけ凶暴なのに、寿司で食べられている
ここまで読んで「シャコって、あのシャコ?」と思った人。そう、あのシャコだ。
寿司屋で普通に握られている「シャコ」は、モンハナシャコとは別種(シャコ目シャコ科)だが、同じシャコ目の仲間。日本では江戸前寿司の定番ネタとして愛されてきた。
水中で爆発を起こす格闘家の親戚を、酢飯に乗せてワサビで食べている。人間もなかなかやりすぎている。
まとめ:体長15cm、戦闘力は地球最強クラス
パンチは弾丸並み。1撃で爆発が起きる。目は人間の5倍以上のセンサー。水槽のガラスを割り、軍事研究の素材になる。
体長わずか15cm。
モンハナシャコは、進化が「格闘能力」にステータスを全振りした結果生まれた、地球上で最もオーバースペックな甲殻類だ。


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