刺されてから死ぬまで、タバコ1本分の時間しかない。
そして毒の中にインスリンが入っている。魚を低血糖で気絶させる。
さらにその毒から、モルヒネより強い鎮痛剤が作られた。
タバコ1本で死ぬ。「タバコ貝」の異名
イモガイ(Cone snail)は美しい模様の貝殻を持つ巻貝だが、その毒は海洋生物の中でも最凶クラスだ。
特に危険な種では、刺されてから死亡までの時間が極めて短いことから「タバコ貝」の異名がある。「タバコを1本吸い終わる前に死ぬ」という意味だ。
過去に確認された人間の死亡例は約30件。致死率は種によって15〜75%。見た目のかわいさに反して、拾ったら終わる貝だ。
インスリンで魚を低血糖にして気絶させる
一部のイモガイ種は毒の中にインスリン類似物質を含んでいる。
これを水中に放出すると、周囲の魚の血糖値が急激に低下。魚は低血糖ショックで動けなくなり、その間にイモガイがゆっくり飲み込む。
毒で殺すのではなく、糖尿病の薬で気絶させる。これほど知的な狩りをする貝は他にいない。
毒から生まれた鎮痛剤
イモガイの毒ペプチド「コノトキシン」から、鎮痛剤ジコノチド(商品名:Prialt)が開発された。2004年にFDA(米食品医薬品局)で承認。
効果はモルヒネの1,000倍とも言われ、しかも依存性がない。がんの疼痛管理や慢性疼痛の治療に使われている。
1種のイモガイが持つ毒ペプチドは数百種類。全イモガイ合計では10万種以上の生理活性化合物が推定されている。海の底に、まだ発見されていない薬の山が眠っている。
まとめ:殺す毒が、人を救う薬になった
タバコ1本で殺し、インスリンで狩り、その毒からモルヒネを超える鎮痛剤が生まれた。イモガイは「毒」の概念を塗り替える巻貝だ。


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